特別、探していた訳ではなくて。
どちらかと言えば寧ろ、彼女ではない人を探していたのだけど。
知った顔を見かけて、それがオマケに珍しい様子だったら?
気にならない訳もない。
今は、他の事に忙しいから縁遠くなっているけれど、
中等部の頃は、実は『新聞部』所属だったりしたし。
いくつかある内の一つだけど、
アナウンサーだとか、記者だとか、そう云う、
報道に携わる職業も『夢』の一つだったりするので。
『エミちゃんは好奇心が旺盛なのね』
とは、今探してる人の言だ。
良く言うならば、そうだろう。
気になったら、首を突っ込みたくて仕方が無い、お節介とも云える。
勿論、ムヤミヤタラに彼方此方突いて引っ掻き回す程、暇でも無いのだが。
ただ…。
今、気になった『子』は、
まぁ、一応『身内』と云えなくもない…筈な間柄でもある事だし。
それも、憂い得る事に、極めて人数が揃っていない。
フルで勢ぞろいしたなら9人、な所、現在は6人。
足らない3人中二人は来年度にならないと、
実際問題不可能である事実を鑑みるまでもなく。
相当な割合を占める要因は、私自身にあると云えなくもない。
それは兎も角。
二月も中盤に差し掛かろうと言う頃合い。
放課後の校舎内は、どこか浮き足立っている。
それもその筈、女子高生が大好きな冬の二大イベントの一つ、
『バレンタインデー』であるからだ。
日頃は、おしとやかでお上品な、お嬢様学校と言えど、
ご多分に漏れず…である、否、だから余計かも。
そんな中、窓際の席で憂い顔。
張り切って、率先して騒ぐタイプではないだろうと思っていたけれど。
その鞄の中に、しっかりと、小さいながらもリボンのかかった箱が入ってはいた筈だ。
因みに、私がそれを知っているのは、
彼女が悩みに悩み抜いて購入する様を偶然目撃したからだ。
そして、彼女がそれを渡したいであろう相手が、
彼女からのそれを受け取らない…とも思えないのだが。
剣の道一直線…な彼女が、
『その方』以外にそれを渡したいような相手がいるとも思えないし。
「ごきげんよう、紅薔薇のつぼみ」
頬杖をついた憂鬱そうな横顔に、不意打ちで声をかければ弾かれたように振り向く。
流石に、そう呼ばれ初めて半年近く経てば、呼びかけに反応出来るようにもなるらしい。
それでも、どことなく居心地の悪そうな表情にはなるようだが。
呼ばれても気付かずに居た頃に比べれば、随分な進歩。
進歩と云えば、余り豊かとは云い難い、
寧ろ相当分かりにくいように見える彼女の、
僅かな表情の変化が読めるようになった私も。
最も、なんとなくそうかな…位の推察に過ぎないので、
凡そ驚く程正確に『そうだろう』と読み取れてしまうっ某方とは比べるべくもないが。
声をかけついでに、窓から覗きこんでちょっと…否、かなりびっくり。
予想外。
否、或いは可能性としては想定内…か。
来年の今頃だったなら、きっと、それくらいの。
チェックを入れてる子はいるだろうけど。
その予想は少々甘かったらしい。
彼女が頬杖をついていた机の上に、トートバック程の紙袋。
その中から零れるよう見えるのは、小さく可愛らしい包み達。
今日の日付を考えれば、それが何かなど、考える迄もない。
「凄いわねぇ…それ全部貴女が貰ったの?」
問えば、プルプルと首を横に振り、
ついっと、一番上に乗っていた一つを此方に差し出して来る。
見れば、それには小さなカードが添付されていて、其処には『紅薔薇さまへ』の文字。
彼女ではなく、彼女のお姉さまに宛られたモノ。
「全部?」
重ねて問うと、彼女は頷いた。
結構アカラサマニ不服そうな様子で。
まぁ、あの方なら、不思議もない。全校生徒に満遍なく人気のある方だし。
去年も、同じ程…否もっとだろうか…受け取って途方にくれておられたのを覚えている。
見た目からは、余り想像出来ないし、
女子高生としては珍しい事なのだけど、あの方は『甘いモノ』が得意ではないのだ。
気が向いて食べても一口か二口。
なので、実を言うと、それらは私がありがたく頂いて帰ったのだが。
「ナナさん…たら」
小さく、口の中で呟く。
それでも、至近距離、オマケに名前が名前だけに、彼女が鋭く見上げて来る。
ただ、そこに少し、
救いを求めるような色が混じっているように思えたのは自惚れだろうか。
それは置くにしても、彼女の気持ちも分からなくもない。
私だって、お姉さまが沢山のチョコだとかプレゼントを貰うのを見るのは、
誇らしいと同時に少し、嬉しくなかった。
素敵な方だって、他の人にも認められてるのは嬉しいんだけど、
私のお姉さまなんだからって、独占欲。
それだけでも十分なのに、ましてやソレを貰ってしまったら?
普通は面白くない。
更に付け加えるならば、切欠と云うか、
馴れ初めが少々一般的な他の姉妹とは違うからだろう、
彼女はあの方の行動や言動を深読みしがちな傾向がある。
だからきっと、ありもしない『ウラ』を読もうとして…の憂い顔だったのだろう。
「良ければ、コレをお使いなさい」
云いながら、開閉部が巾着になっていて中身が見えない
空のトートバックを差し出した。
そもそもは、去年同様持て余しているだろうあの方から、
受け取る為に持参して探していたのだし。
受取人が変わったとしても、備えが無いだろう事は自明だから、
流用して活用されるなら問題は無い。
「ソレに罪は無いし、
多分、貴女が甘いモノが好きだから…位しか考えてらっしゃらないと思うわよ」
あの方、そういう所『天然』だから…と、続ければ。
イヤそうに眉を寄せながら、
それでも彼女は私が差し出したトートバックを受け取って、
紙袋の中身をガサリと入れ替えた。
end
黄薔薇エミちゃん語り。
無論、『彼女』は久ちゃんで。
2010/02/17 by 未来 恵 (ミキ メグム)様
*未来様のところで展開されておいでの“女子高生・まりみて Ver”
紅薔薇の妹スールがなかなか決まらないままだったところへ、
ひょんな成り行きから縁の出来た赤い眼の彼女を、
自分の妹にしますと公言なさった…ことから始まる、目くるめく女学生の世界。
(789の三人娘が 同級生のVer.のも展開しておいでです。)
キャスティングが原作のと絶妙にぴったりで、
続きは?とワクワクとお待ちしておりましたようvv
ウチでも好きにして構いませんとのお墨付きを頂きまして、
まずはの掲載をさせていただきましたvv
大切にしますvv 宝物ですvv
未来 恵 様のサイトさんへ


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